南木山物語(18)

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          南木山の女 (3)                               作  唐松 緑

 秋の南木山は紅葉で山全体が華やいでいる
 太郎は南木山の女を描いた桂木の絵に、心を奪われていつまでも見入っていた。
 太郎の横に立っていた桂木がぽつんと言った。
 「松木さんの奥さんのおかげで、この絵が出来ました」
 「えっ、私の妻の、それはどうしてですか」
 「この絵の中の女性は奥さんを描かせていただきました」
 「華子・・・・華子をですか・・・」
  太郎はまじまじと絵の中の女性を見た。
 少し横向きで顔の表情ははっきりしないが、
顔の輪郭と、長い黒髪、体全体の雰囲気が
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確かに華子に似ている。いや、これはまさに華子だ!
 黄金色に紅葉したカラマツの大木と、空中に舞い踊る無数の細いカラマツの葉。その中に髪をなびかせてたたずむ華子。
 太郎は言いようのない感動を持って立ち尽くしていた。
 「この絵を展覧会に出品しようと思います。
それにつきまして太郎さんと、華子さんのご了解を得たいのです」
 「ええ、勿論、この絵の中には桂木さんの才能が凝縮しているように思えます。
 僕たちが了解するなどとは、おこがましいことですよ。展覧会には是非観に行きたいと思います。
 こんなに素晴らしい絵の中にいる華子は大変な幸せ者です」
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 太郎は興奮状態になってしまって、自分が今、何を言っているのかすら解からなくなっていた。
                       つづく
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